東京大学農学部創立125周年記念農学部図書館展示企画
農学部図書館所蔵資料から見る「農学教育の流れ」
 
日東魚譜
神田玄泉纂 写本
 
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『日東魚譜』索鯛(サクダイ)條鯛(スヂダイ)他
 医者であった神田玄泉の著で、我が国で最初の魚介のみの魚譜といわれる。序文に享保丙辰歳二月上旬とあるから、1736年に序を記したことになる。ただし、いくつかの版があって内容も若干異なっており、最古は1719年、一般には1731年版が認められている(上野益三著『日本動物学史』平凡社 1987)。全文漢文で記された和紙(ただし、絵図にある種名はカタカナ表記)をとじ合わせたもので、食用・薬用としての魚介類が記述されている。上野は54枚の絵図を入れて分かりやすくしてあると書いているが、本書には285枚もの絵図がある。もともとは5巻ものとされているのに、本書は9冊に分冊されており、絵図数の増加を併せ考えると、後生にかなり増補して刊行されたものと推測される。さらに、上野の記述では分類体系がかなり人為的とされているが(たとえば、海産無鱗魚に、タコ、イカ、クラゲ、ナマコ、ホヤが入れられている等)、本書ではこの点著しい改善が見られるため、分類学の知識が普及し始めた明治時代初期に作り直された可能性がある。しかし、写本を含めて本書を所蔵しているところは10数カ所しかない稀覯本である。漢文と魚の絵図とを対照して、内容を理解するのも一興であろう。なお、登録番号順に見ると、内容に矛盾があり、配列を変える必要があると考えられる。
(水圏生物科学専攻 谷内 透)

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