東京大学農学部創立125周年記念農学部図書館展示企画
農学部図書館所蔵資料から見る「農学教育の流れ」
 
Carl von Linne
(カール・フォン・リンネ)
1707-1778
クリックすると拡大画像が表示されます
リンネ『自然の体系』
12版改訂版 1767 標題紙
クリックすると拡大画像が表示されます

リンネ『植物の属』
9版 1767 標題紙
クリックすると拡大画像が表示されます

リンネ『植物の種』
1753 (復刻版 1935)
 Systema naturae. 12th ed., rev. 2v., 1766--1767
 Genera plantarum. 9th ed. 1767
 Species plantarum. 1753(復刻版 1935)
 リンネは、植物分類学の父といわれその名を多くの人々に広く知られている。スウェーデンに生まれ、ルンド大学で医学を学び、その後ウプサラ大学に移り、1741年医学部教授、翌年植物園長となった。ウプサラはストックホルムの北66kmの亜寒帯針葉樹林気候であり、リンネの住まいの周りは極めて植生の貧弱な土地であった。しかし、リンネの家の中は植物のスケッチで埋まっており、植物の分類において初めて種という概念を用いて、世界で最初の生物の分類体系を提案した。リンネは自然物を整理して、1735年に動物・植物・鉱物の三界を扱った『自然の体系』(Systema Naturae 第1版)を出版し(第十版が動物の命名法の基準となる)、1737年に『植物の属』(Genera Plantarum)を、1753年に『植物の種』(Species Plantarum 第1版、植物の命名法の基準となる)を出版した。リンネは、植物を雄しべと雌しべの数や形に基づいて区分し、当時知られていた植物を7700種に分類した。また、この分類に用いた方法は、属と種小名の2つをラテン語で列記し、さらに、これに命名者の名前を記載する二名法(binomial nomenclature)である。例えば、ツバキはCamellia japonica Linnaeusで、Camelliaが属名、japonicaが種小名、Linnaeus(Linneのラテン語名)が命名者名である。この二名法は、その後の植物の命名法の出発点となり、国際植物命名規約の基準とされて現在に引き継がれている。このように、世界の植物についての知識を整理して体系化することで、植物の種に関する知識を多くの人々が共有することが可能になったのである。
 わが国で普通にみられる樹木のイチョウGinkgo、マツPinus、ネズミサシJuniperus、ネズコThuja、イチイTaxus、ヤマモモMyrica、クルミJuglans、ヤマナラシPopulus、ヤナギSalixなどの属名はすべてリンネの命名によるもので、リンネの命名になる属の枚挙に暇がない。
 リンネはツンベルグ(Carl Peter Thunberg, 1743-1828)など多くの人材を育て上げ、その功績を記念してスイカズラ科リンネソウ属にLinnaeaが用いられて広く知られている。
(森林科学専攻 鈴木和夫)

前の資料へ← / ↑展示資料リスト / →次の資料へ
 
展示会表紙 / 東京大学農学部図書館ホームページ