東京大学農学部創立125周年記念農学部図書館展示企画
農学部図書館所蔵資料から見る「農学教育の流れ」
 
水中動物図
写本
 
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『水中動物図』
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『水中動物図』渡蟹、平家蟹
 駒場農学校時代からの蔵書である。表紙中央部に農商務省図書第四〇六號共冊という紙が貼られ、その上部に駒場農學校の蔵書番号が付されている。著者、出版社、出版年月日についての情報はどこにも記されていないが、駒場農学校時代の蔵書であるから、少なくとも駒場農学校が東京農林学校と改称した明治19(1886)年7月以前のものである。中身は、190種余りの主要水産生物の生息場所、成長、産卵や産仔などの生態的な情報に加えて漁獲法や味覚を簡単に紹介している。魚類がもっとも多く、131種に及ぶ。各種にカラーの絵があり、頁をまたがって描かれている生物も多く、和紙ををとじ合わせた当時の製本状況が伺い知れる。必ずしも絵が正確に描かれているとは言い難い反面、絵には生々しい躍動感があふれ、見ていて楽しい蔵書である。学術的な価値は高くはないが、現今とは異なる名称のものも多く、当時の世相を表す出版物にみられる魚介類の正確な名称が推測可能である。
(水圏生物科学専攻 谷内 透)

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